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校長  八巻和彦

本校は1895(明治28)年、大隈重信の教育理念にもとづき坪内逍遥らによって創設されました。 いくつかある早稲田大学の附属・系属校のなかで最も古い伝統を誇る学校です。

明治維新直後から政府内にあって日本の近代化のために多大な貢献をした大隈重信ですが、 彼がとくに強い関心を持ち続けた分野の一つが教育です。 先ず1872(明治5)年という早い時期に、親の身分の関係なく、また男女を問わず、満6歳になれば全ての児童が学校に通うという、 義務教育制度の実施を決定して「学制」を公布しました。

その十年後の1882年には、のちに「早稲田大学」となる、高等教育機関としての東京専門学校を創設しました。 さらにそれから13年後に、中等教育機関としての本校「早稲田中学校」を大隈は設立したのです。 つまり、大隈の教育理念の完成として本校が創設されたとみなすことができます。

大隈は少年についてこう述べています。理想がなければその実現のための道は見つからず、志がなければ結果が生じるはずがない。 それゆえに、多情多感であるという少年時代特有の性向を生かしていろいろな事を実際に経験させてやることが、 少年にとってもっとも必要なことである、と(『大隈伯昔日譚』)。 大隈は少年を、つまり本校の生徒たちを、あたたかく見守る姿勢を堅持していたのです。

実際に本校は創立以来、教育目標として「誠」、「個性」、「有為の人材」の三点をあげています。 言行一致という意味での「誠」を身につけるなかで、生徒一人一人がその「個性」を伸ばしつつ、 結果として世界に貢献できる「有為の人材」として育成されることを目標としているのです。

1948年の教育制度改革以来、本校は中学校と高等学校を併せた、中高一貫の男子校として今日に到っています。 つまり本校の生徒は、各自の長い人生に大きな意味をもつ青春時代の6年間を、一貫したカリキュラムのなかでじっくり学ぶことができるのです。

本校のもう一つの特徴は、早稲田大学の系属校であることです。生徒は自分の考える将来像に沿って、 推薦制度により早稲田大学の諸学部に進学することと並んで、 早稲田大学のみならず他の大学のいろいろな学部を受験して進学する道も開かれています。 このシステムの成果として、例年、卒業生のうちの約半数が早稲田大学に推薦入学し、あとの半数が国公私立大学の各学部に進んでいます。

本校は、生徒諸君を効率よく有名大学に送り出しては、その数を誇る、という教育はいたしません。 創立者大隈重信の少年をあたたかく見守る精神にのっとって、生徒一人一人の人生がいっそう充実したものとなるように、 各自の個性に正面から向き合い、将来を見据える指導をしています。

もちろん、生徒諸君の人格形成、躾については、ご家庭が基本です。 しかしながら、生徒は学校で毎日の約三分の一を過ごすわけですし、 本校の場合は同じ場所と同じ人間関係のなかで六年間という長い時期を過ごすのですから、 学校としても、生徒諸君の人間力を鍛えるための指導に努めています。毎日の学習においてはもとより、 自主的なクラブ活動などの日常的な場に加えて、全校をあげて実施する体育大会や興風祭(文化祭)、 それにさまざまな学年行事、また高校二年時の関西研修等において、 生徒の自主性と学校の指導との絶妙なバランスが実現されるように配慮しています。

13歳から18歳にあたる中学・高校時代は、小学校までの、親御さんや先生たちの指導の下にあることを疑問に思わなかった一人の男子が、 自らの自立に向けて苦闘を続ける六年間です。生徒諸君一人一人が自分の大きな理想に向かって羽ばたけるように、 学校と家庭が力を併せてゆきましょう。

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